namo śrī guru mañjughoṣāya
慶友への大慈の涙で濡れている
爾然 暗黒の闇のすべてを焼き尽くす
絡み合う鎖の環は断ち切っている
爾然 強くここに大慈で繋がれている
静寂の河は偏って歪曲しはしない
爾然 他者へ自己より愛は溢れていく
妙に響く文殊師利へと私は跪かん
絶望のなき主人への讃歌を歌うために
四つの真顔は賛辞のことばを語っている
千の眼差は直視し永遠に降り注いでいる
快楽の主宰者さえ虚心となり君には跪く
勝者の代理人 君の足下に私は礼拝する
君は透明な湖に百の花弁を開いている
それはまた陽光によってさらに発光する
君は澄んだ霽空で星たちを護っている
それがまた茉莉花の園に光を注いでいる
君は相好の眩しい光の環の中心にいて
君を視つめる衆生の心を瞬時に奪っている
大慈の主 君へ 幾世でも私は跪かん
どうぞ私の頭頂を荘厳し給わんように
魔を降伏させる陣中では恐怖がない
無敵の勇者たち 天地と地上の最勝師
いつでも眼差が戦慄する衆生に注がれている
私たちを導き給う君 私は君の御足を礼拝する
無辺の所知へと礙げなく志向する
智慧の力で凶悪な魔軍は敗北する
威勢よき若い花も落雷で斃されるように
十力の稲妻の閃光で威嚇している 君よ
敵陣を率いる凶暴な象を撤退させてゆく
善説の咆吼を群衆の中心で響かせている
謀略する狐たちも辺境へ駆逐されてゆく
四無畏を具足し給える人間の獅子 君よ
驕慢にみちた 世間の祖父 梵天
弓箭の持ち主 沙門や婆羅門たち
彼らの誰も語り得ない最勝なる輪
これを転じ衆生を慈しみ救済する 君よ
御身と御言葉には錯誤という名前すらない
記憶を失うこともなく常に平等に入定する
差別や偏見は捨て 寂静へと等至し給える
君の所行は完全に円満で清浄なものである
救済せんとする意思を精進と信念を共にし
禅定と智慧により解脱へと常に向いている
この道から逸れるすべての機会を遠離した
君の証解はこの所以から無上なものである
三世のすべてを障礙なく通達なされてる
清浄な身体と御言葉と御心とその活動は
界の終末を迎えるまで衆生を利益する
この重責を歓喜しながら背負い給える 君よ
広大なる功徳のすべてを究竟し給いて
微細な過失の発生源すら超克し給える
君よ その大慈の溢れだす場となれる
この悲痛の慟哭をしばしは聞き給わん
苦しみの海から解脱へと向かってゆく
かけがえのない人身の船に乗っている
しかし放逸に堕ちて 眠っては話し込む
財産や名声とを追求する慾に穢れている
無意味なことばかりへと心は向かっている
大義を実現しやすいこんな身体も消耗する
私は人間の皮を着ただけの家畜である
君よ 大悲の眼差で見守り給わんことを
かけがえのない身体に恵まれても
力もなく逃げだすこともできない
最強の死王の使者がやってくる
病いと老いとを手に届けてくる
いつ死ねるのかさえ 決まっていない
すべてを捨てることすら 忘れている
年月や暦を数えるだけで過ごしている
暗闇のなか 私は慈しみの最期を迎える
決定勝の境位など語らなくてもよい
道の所依とできると称賛されている
天や人へと生まれてくる保証などない
こんな私を君は気にせずにいられるか
華やかな善趣の身体があっても
教説を正しく弁える智慧により
賢き道を誤らずに見出せないなら
再びまた輪廻の海へと堕ちてゆく
それ故 無知という深い暗闇に囲まれて
何処に行くべきなのか何も見えていない
こんなにも永い間途方に暮れてしまった
この私に智慧の灯火を与え給わんことを
灼熱の鉄の大地へと晒されて火炙りとなる
武器の雨は降り注ぎ身体中へ刺さっている
獄卒に串刺しにされ溶けた銅を飲まされる
舌を引き伸ばし鉄釘は打たれて吊るされる
氷山に囲まれ凍った穴に監禁され
極寒の強風が吹雪いて凍えていく
あちこちに水疱ができ時に破裂し
身体のすべてが粉々になっていく
乱れた髪に隠されて喉はいつも渇いている
かすかに見える水を飲もうと進んでいくが
剣や槍をもつ衛兵たちに道手を阻んでいる
辿り着けた水も血膿のように飲めもしない
くちびるは針先ほど 喉に何か詰まっている
何も飲むことも 何も食べることはできない
食べて飲んでも すぐ焦げ身体を燃やしてゆく
自分の糞尿か肉を刻む以外には食べものはない
蒙昧という深い暗闇に包まれている
正しい道なのかどうか分かりやしない
殺し合うのか それとも天人の家畜となるか
叩かれては繋がれる 痛みが休まることはない
神々たちは互いの権威と名誉に嫉妬する
燃え上がる火焔が安らいだ心を破壊する
戦争により身体を粉々に砕け散ってゆく
謀略に翻弄され 何が正義かも見失っている
勝者の密意を清浄道理で如実に証得する
意趣に則ってご自身でも慈心に動かされ
善巧方便を行じ他者へ教示も究竟し給う
そんな善知識たちにまた出会えるように
彼らに師事し数多の法を聴聞しつづけて
その海原で永く漂い疑念のすべてを断つ
彼らが語らんとしたことを現実化して
善逝たちを歓喜しつづけられるように
牟尼が定め給える矩を踰えることもなく
勝者の家業を継ぎ 善知識を敬っている
円満な鋭根をもち 逆禍から離れている
そんな清浄な者に囲まれて在れるように
暗黒の側面が意志を揺さぶる
集いし法行の宴も中断させる
悪魔の親族たる悪友たちとは
刹那たりとも交わらぬように
この光景を眼にすれば勿論だろう
聞くだけでも恐ろしい惨劇である
地獄 餓鬼 畜生 そして修羅道
さらに険しい崖の底へと堕ちてゆく
賢者が咎めるこの罪業は深く重く
無始以来 そしてこれからも積集する
崖の淵で前を向くが弱りきったこの私を
悪趣の恐怖から救い給う時がやってきた
人に生まれていても財産や地位を
失うかも知れない憂いに悩まされ
上趣にはいても恵まれず困窮する
欲望を実現するために疲弊してゆく
快楽を求めてその糧へと奮闘するが
ひとつ叶えてもいつも完璧ではない
身体には苦痛があり心には不安がある
何をするとも様々に苦しみ悶えていく
美しい肢体と宝飾品で身を飾り
美しい宮殿の楽園に住んでいる
永く望んだ希望のすべてが叶い
上趣の神の栄華を極め遊戯する
しかし死相が射し込んできたいま
これまでずっと心を魅了されてきた
数々の美しい天女たち 楽園の宮廷
甘露の料理や服飾品は失われてゆく
もう若き息子たちとも離れてゆく
望まないが別れの時が来てしまった
この身体にてここに生まれた快楽すら
感じられないほどの強烈な苦痛である
悲しみの業果の炎によって身体は焦げてゆく
幾世にも積んだ善業がいまはもう尽きていく
過去の努力の果を満喫したのも終わりである
享楽的に放逸し悪趣への準備だけ万端である
いまもう一度あの悪趣へと転生し堕ちていく
欲を満たすため 悶えて傷つけることもない
眠ってしまわずに 心の重圧も退けている
心や体に走る激痛も いまは逃げだせている
上禅定の力により 永く安らかに過ごせている
たとえ色無色界の境地を得ていても
行苦という呪縛から逃れられやしない
過去世の禅定で誘われていまこれが尽きる時
再びいま落下して輪廻をめぐってゆくのだろう
人間や神々は輪廻の牢獄の主人公であるはずなのに
それでも生まれきて死んでゆき老いては悶えている
こんな激しい流れに溺れたままで有海へと漂着する
有るという快楽へ囚われたこの不条理を知りつつも
心と裏腹に愛着した 知性の眼は塞いでいた
苦しみを快楽と錯覚した 邪見に駆られていた
ここで転倒して挫けていた 私は何も見えていない
どうか この有の激しき流れから救い給わんことを
貪欲の泥に沈んでしまい解脱道から逸れている
無明の深い闇のなか 智慧の眼を持っていない
戯論により逮捕されて輪廻の監獄に監禁される
業の拷問を受け続けている私 君の大悲の所依
恐ろしい輪廻の断崖に墜ちないように
純粋な志から何度も繰り返し聞法した
真偽を量るため 清浄な道理の力をかりた
無限の善説の了義・未了義のどちらなのか
他人をあてにしなくても 如実に峻別できる
そんな賢者の境地を得なくてはならないのに
然れども勝者の微細な意趣はもちろんである
進むべきか 退くべきか その方角すら
判然と視つめる眼が私には存在しない
またもやこの魔の闇に覆われ消えてゆく
視界もない 解脱への出口など見えてはない
どうか思い給えよ この醜態を 闇を払い給え
勝者と勝子の御前で五明処の
海原に幾度も生を受けてきた
聞法を繰返して 習気は覚醒している
衆生に賢道を示し給う君 ただひとつの眼
過去の賢者たちにも見放されてきている
どこへ向かえばよいのか それも判りもしない
どこにも寄る辺はなくいまここに迷い込んでいる
こんな私を大慈の君は客人として迎えてくださる
何度でも転生しても君を仰いで仕えたい
救済主 弥勒 大慈で衆生を救われる方
速やかにここへと降臨され給わんことを
幾世でも勝乗の善知識となられんことを
身体をもっているすべての者たちのことを
君はいつも休むこともなく慈しみ給われる
いま君の前で功徳を想い時を過ごしている
信じる心は日々を重ね 次第に深まってゆく
とはいえ 君の居場所はあまりに遠く離れている
もういちど寂静の妙味に触れてみたいと思うのに
そちらへと行きたいのに 身体が動こうとしない
だからいまは 君よ 最勝なる福徳の樹よ
私はこころを浄らかにして 供物を献上する
この大地は黄金と宝石からできている
神々たちの着る やわらかい正絹がある
釈尊が比丘へ賜われた その品々がある
三衣 錫杖 仙人の鉢 これを献上する
それと禅定と請願で化現して創り出さん
すべての供物が至善と歓喜に溢れている
天空を覆うばかり供養の品を積み重ねる
両足の君 君の下へ 私はいま献上せん
拘ることも貪ることもなく 心を込めて
代わりに得たこの純粋な善資のすべてにより
これから先ここで永く流転しながら在る時も
千万の苦難に悶え 安らげる猶予もない時も
何人たりとも見捨てぬ救護者となれるように
世間を導ける最勝の地位に至るまで
どんな生を受けるともそのすべてで
梵行の清浄円満な出家の所依を得て
大乗の種姓が覚醒してゆかんことを
忍耐強く誠実で詐ることもなく
畏れずに勇敢であり信念をもつ
崇敬の念でいつも精進を怠らず
洞察力ある最勝の智慧を得んことを
牟尼王へと仕え 謹んで学ぶ時
その広大な行の成就を妨害する
悪魔の仕業が悪劫へと連れてゆく
そんな障害の履歴は残らぬように
それを身にする者を賢者は歓喜し
導師には沙門の荘厳と讃えられる
菩薩行に従う順縁のそのすべてが
滞ることなく実現していくように
菩提を行じる時にはどんな所化をも
清浄学処で自制する出家へと導かん
彼らに必要な日用品があるのならば
思うだけですべてが得られるように
これから先如何なる生を受けるとも
この身口意で為せるすべての活動は
無限の衆生のための利益の源となり
すべてが彼らのためにならんことを
愛する息子を失った母親のように
深い傷を負っていつも悶えている
彼らのすべてに常に心を尽くして
自己の所有物のすべてを捧げたい
信解を行じて垢を浄めてゆく
過去 現在 未来に出現する
此岸の菩薩衆のなか私はいる
黄金の大地の中心の須弥山で
眼 神通 聞法を積み重ねてゆく
功徳はすべて 品位高く聳えている
稚拙な破壊のすべてを超克してゆく
援軍を頼らない孤高の勇者とならん
勝子として聖者地を学んでゆく時に
三世の勇者たちのいるすべての地を
ひとつずつ私は訪ねて巡ってゆこう
鳥たちの路を飛び回る鳳凰のように
他の勝子たちにも量り得ないほどの
広大極まりない所知の要のすべてを
淀みなく知る智慧を滞りなく発動し
広大なる行法の源流となれるように
このように行じて果を成就する時
三世の勝者の仏身と彼の仏国土と
眷属 活動 寿命 請願の一切を
ひとつに集めた一切のこの行法を
賢く巧みに行じ円満したその後に
永く思いを込めたこの衆生たちへ
正法の甘露で大粒の雨を降らせて
一刹那にして私が救いだすように
天を含む一切世間の唯一の救済者・勝者・弥勒主への悲讃・梵天の宝冠、と題する本編は、多聞の遊行者、吉人ロサン・タクパがロダクのトンリの日出る隠棲処にて綴ったものである。善たらん哉。