吉楽の空界の彼方より
教化のため示した仏身は雲となり
甚深広大なる法雨を降らし給へる
彼の尊師たち頂礼致します
ひとたび得たこのゆとりと恵みを
何も活用せず浪費して過ごしてきた
いま解脱の道を進む時は迫っている
それ故にこそ前進への鋼を手にせよ
今年今月現れくる
すべての所業を成し終えて
その後から清浄法を為せばよい
この思いもすべては欺く魔軍である
今生に現れくる所業も波紋の如く
ひとつが去れば また次が来るだろう
ひとつを成し遂げ 増えてゆく
いま粗行だと断切ると善ではないか
法行をせんとする明日来る間に
死期はいますぐそこへと来ている
この危険を無視することなく法行をせば
いま今日これからからすべきではないか
歴史に残る勝者たち その子息たち
彼らの偉業の数々は三界に名高いが
いまは居らず名ばかりが残っている
これもすべて無常を示す阿闍梨である
権力と暇を持て余した 覇者と家臣たち
彼らは歴史に系譜を示しているのか
深く考えなければ確かにその通りだろう
しかし彼らもいまは三界から退き代理さえいまない
この自分と旧来の仲間たちは
寿命や力量の多くを共有しているが
忽ちに死神という強敵に連れ去られる危険に晒されている
いま自分はその怖れはないと確信できるのか
極めて蒙昧な羊たちでさえ
仲間が殺されるのを見れば震撼する
他に示された姿を 自らへと照らし合せ
知り得ないとすれば 牛よりも愚劣である
仲間や親戚や召使がいくら多く集うとも
強風で木の葉が忽ちに落とされる如く
一山すべてが失われてしまうように
再び集うことなき最期の集いに過ぎない
様々な方角より集いし市場もまた
晩秋を迎えた蜜蜂たちのように
集うとも別れ そして消えて行く
これ思えばまた無常の阿闍梨である
後に現れる器を顧みれば
夏や冬と呼び名を替え欺くとも
十日間の寒気に山峰のすべての
色は移り変わり常ならざるものである
青き湖に浮かぶ 波たちの舞は
騒々しく大きな波音を立てたとしても
冬が来て 一面に氷張り詰めた時
秘話の囁きの密やか音となる
眩い緑葉を九士が愛でた時
六足の蜂たちが連なりし花畑は
秋の紅葉で失われ 荒れ果て
風に悶えて飄々と唄っている
昼と夜 白と黒の二匹の鼠は
寿命を縛る縄の根元を交互に蝕んでゆく
それだけではなく更には一刹那毎にさえ
敵死神の下と突き進んでいる
髪は白くなり 身体は弓のように縮み
老いさらばえた 父母は震えるにも関わらず
いま顔色のよい息子が屍となるのならば
老若の順序を誰が付けると言うのだろう
財宝や財産の鞘に膨らむ豆もまた
逆縁の霰で地に落とされた時
以前に自分が養いし召使いの門を叩き
物乞いをしてもお返しをもらうのは難しい
いまこの時に心安き仲間たちも
言葉遣いの良し悪しをむやみに考えて
思い違うことで明日には宿敵となる
遠近の情もその時から切れてしまう。
速ぐに栄えたいという慢心したこの世の繁栄のすべては
蝶たちが灯明を美しい家の如く思ってしまう
華々しくとも偽りに充ちた誘惑は
常楽への命の根が断ち切るものである
要するに速やかに来るべきことだけは確かだが
それが一体何時くるのかには確定は無く
その時がやってきた時に退け得ないものなのである
我々は敵死神の口へ入ってゆく時
久しく親しんだ仲間のこの肉体も
未だ温かき床に捨て置いて逝かねばならない
それ故 宝石や財産や仲間や召使い達も
その後には眼を向ける機会も無いのである
一生をかけ休みなく働き続け
敵を退治し味方を大切にしてきたこの生業も
やりかけた残りをすべてそのまま置いて
善悪の重荷を背負い来世へと行かなければならない
手ぶらで道を歩むように困難な中有の狭き路を
敵たる夜摩の軍隊たちが路を塞ぐ時
有の繁栄のための要請に誘惑された
過失が示されていたことを知り悔むとも遅い
手ぶらで行くべき道の導き手は仏法であり
長い道程で糧となるものも仏法である
険しい道すがら支援してくれるのも仏法である
いまこの時から三門で仏法を加行しなさい
その自由がいま自分に有るこの機会に
常楽という安全地帯を持たぬなら
呼吸すら困難になり危篤となり
慌てふためく時はすぐにもやって来る
その時役立つこの無常への思いこそが
初時 中時 後時の如何なる時にも
心を仏法へと促すものである
中観の顕現を排除する大道であると説かれている
心をこのように法へと巡らす時
甚深法と呼ばれるものは多いとはいえ
護者 三世の勝者の智慧を享受された
ジェ・ロサン勝者の流儀が最勝である。
顕密双運で 教行双運なる
菩提道の体数次第などの
すべての要訣を円満にしたものに
如何なる時にも習気をなるべく植え付けよ
シャム修習を実践の根本行となし
その加行と終了時の次第についても
ジェ・ラマの教え通りに正しく成就し
有暇具足に心髄を得るように探求せよ
このような次第を成就せんとする善資の力で
我が常住であると把える盗人と
客体を真実と把える魔軍とを克服し
栄光の不死の境地を得ますように