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『水の教え』を読む
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『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第60回
煩悩を制圧するためには、巧妙沈着な戦略が必要となる
たとえ敵を降伏させんとする時も ゆっくりと穏やかに振舞うべきである 静かに潜んで動いていく者が 魚たちを捕まえるのを見るとよい 60 チベット仏教は大変理知的で、日本の仏教に比べれば教義も大変複雑である。チベットの僧侶の方々から教えていただ
2020.05.24
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第61回
煩悩とは他者に対する、自己破滅型の思考である
他者が栄えるのを嫌う者は 自らの徳すらも喪失させる 激流へと飛び込んでしまうと 自らは死ぬが相手は無傷である 61 煩悩というのは基本的に自己破滅型の思考である。すべての煩悩は悪業の動機となり、苦しみしか生み出することがない。それらは他者と
2020.05.25
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第62回
最強の軍事力を誇る真の勝利者、それが釈尊である
結局 敵の敗北と勝利を望むなら 徳行を成し遂げるのに励むべきである 大河を渡ろうとせんとする手段は 平地で舟を作ること以外にはない 62 自己破滅型の煩悩のすべては、他者をきっかけとして生じてくるものであるが、その破滅、悲劇は自らが味わなな
2020.05.25
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第63回
善業の水源は我々自身の精神的な現象にある
自ら徳行から退かなければ 敵たちでさえ打ち負かせない 湧き水は自ら枯れないのなら 地面に押さえられても止められない 63 仏教の業報思想を考える上で重要なことは、それが精神的現象であり、物質的現象ではないということがある。たとえば殺生をすれ
2020.05.25
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第64回
娑婆世界で我々が享受するすべてのものは、過去の業に応じた果報である
貧困と富裕 冷静と粗暴 高貴と下賤 すべては過去の業に応じた果報である 水輪が攪拌されたことに対応して 山脈や陸地といった環境は出来ている 64 須弥山を中心とした娑婆世界である器世間はすべて業によって生成されたものである。仏教では因果応報
2020.05.26
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第65回
貧しい賢者は静寂を求め、富める愚者は喧騒を求める
賢者の大半は貧しくなるだろう 愚かな者こそが財宝に富むだろう 濁って汚れた川の方が 蛙や蝌蚪や虫がより多い 65 賢者は、欲界で享受する物質的なものには背を向け、仏法と衆生のために役立つ活動をしているものである。だからこそ貪瞋痴の三毒の煩悩
2020.05.27
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第66回
釈尊が仏教を説いたようなことが起こるのは、極めて希少な現象なのである
百人の中から勇者は現れる 千人の中から賢者は現れる 無熱悩池からは黄金水が 大海からは宝石が現れる 66 勇者や英雄と呼ばれる者が現れるのは100人にひとりであり、賢者はそれよりも少なく1,000人にひとりくらいの貴重な存在であるという。黄
2020.05.28
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第67回
人間である限り、犬よりは賢くあるべきである
知性に乏しい人間は 富を得ても使途を知らない 犬はどんなに喉が渇こうと 川を吸い込まず舐めて飲む 67 善悪の分別もできない知性のない人間は、どんなに物質的享受をしていても、その使い道を知らない。彼らは貧しい人に施しをしたり、僧集を供養した
2020.05.29
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第68回
心の砂漠化を防ぐために
自他の誰にも役立たない 財産は無いのと同じである 水なき土地がどんなに広くとも 皆は砂漠に過ぎずと見放している 68 チベット難民の人たちは、寄付をよくする。昨年末にはオーストラリアで火事があった時にもたくさんの人たちが寄付を募ってオースト
2020.05.30
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第69回
井戸水を枯らさないためには、井戸水を使うのに尽きるということ
財産を増やしたいと思う者はまた 一部を寄付すべきことを知るべきである 井戸水は汲んで使うと増えてゆき 放置するなら濁って枯れてしまう 69 仏教や宗教を学ぶのは、本来は我々がより幸福になり、より豊かになるためである。そのための財産を増やす方
2020.05.31
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第70回
光の全く存在しない暗い海に投げ出された恐怖
無知な愚者が如何に享受しても 苦しみの源以外の何物でもない 黄金山の間にあるすべての海が 常に闇に覆い隠されているように 70 神仏や修行者を供養したり、貧しく困った者たちに施す、ということを知らない愚かな者たちはどんなに多くの財産や物質的
2020.06.01
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第71回
豊かな実りある未来のために
富める者は福徳を積むべきである 福徳を損なえば失いやすいのである 樹を植えどんな立派な枝が生えるとも 水分がなくなればすぐに枯れてしまう 71 本偈は、どんなに豊かで財産があろうとも、無かろうとも、神仏や修行者を供養したり、貧しく困った者た
2020.06.02
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第72回
巨大な循環運動の潮流の畔にて
福徳がもつ力 善なる知性 これらは互いを因とし運命を切り開く 河は雨の源となり 雨は河の源となる 互いを因として流れ大地を潤してゆく 72 一切衆生に対する利他心である菩提心と無我を証解する智慧との二つは、方便と智慧の双運といい、ちょうど鳥
2020.06.03
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第73回
神々と人間の師であると言われる釈尊のことば
多くを語ろうと少なく語とうと 意味さえあれば耳は傾けられる 貯水池の大きさがどんなでも 深いかどうかは泳げば分かる 73 空虚な言葉、暴力的な言葉、心の貧しくなるような卑しい言葉が蔓延する。世界が不安定な状況になるのならば、その傾向は大変強
2020.06.04
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第74回
切り拓かれた道統を追うことは安易である
善行の伝統を切り拓く者が賢者である 彼の後を追うことは容易いものとなる 駿馬が泳ぎ渡れることを示した道ならば それに続く犬も渡ることができるだろう 74 本日はチベット暦四月十五日、サカダワの満月の日である。釈尊がブッダガヤにて現等覚し、ま
2020.06.05
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第75回
揺らしてこぼしてしまわぬように
賢者はすべて平等心に満ちている 偏って見る者は貪瞋に満ちている 水をきちんと満した瓶は運びやすく 途中まで充しただけではこぼしやすい 75 本偈は、知るべきことを知り、それを実践できる賢者と知るべきこと知らず実践もできない愚かな者との違いを
2020.06.06
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第76回
社会的距離間を言語活動にも適用する
思いつきをすべて口に出す人を 誰しも当てにできないと軽んじる せせらいで流れている河ならば こどもたちさえも泳ぐことができる 76 思ったことを何でもかんでも軽々しく口にすることを慎むべきである、本偈はこのことを説いている。軽々しく発せられ
2020.06.07
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第77回
やさしく微笑を伴うが、底知れぬ冷たい河のように
言葉は少ないが微笑を伴い的を得ている そんな話に人はすべて耳を傾けるのだろう 音もなく静かに緩やかに流れる河ならば 水深がどれだけあるかを知り難いのである 77 重みのある言葉というものがある。私たちは何かを語り、何かを人に伝えたいのならば
2020.06.08
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第78回
岩の表面に善なるものを刻んでゆく
水面に絵を描くかの如く 罪深い心をすぐに捨てるべきである 岩面に絵を描くかの如く 善なる意志を強く固めるべきである 78 私たちは無始の過去から罪業を積んできて、それが習慣化しているので、罪業や罪深い心というものは、すぐに起こすことができる
2020.06.09
『水の教え・波打つ数の二つの教え』を読む・第79回
純然たる善なる動機をもつことの大切さ
善なる意志をもつのなら 世間の行もすべて正法となる 水車を使えば低い溝の水でさえ 高い山の頂まで運んでいける 79 本偈は、チベットの仏教に私たち日本人が触れるとき、何度も何度もチベットの僧侶たちが語る純然たる善なる動機の大切さを説いたもの
2020.06.10
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