今日は満月なので、月とダライ・ラマ法王の話を。
今秋のダライ・ラマ法王の訪日にあたり、チベット人の法王に対する想いをよく聞く機会がありました。
ある在日チベット人の話によると、本土にいた子どもの頃は「満月の夜にダライ・ラマ法王がお月様の上に現われる」という噂があり、子どもたちは満月の夜は毛布に包まって、屋外で一晩中月を見上げていたそうです。
「結局、法王さまは現われててはくれませんでしたが」と、彼は少し恥ずかしそうに笑いました。
その後、インドに亡命し、法王に初めてお会いできたときは涙が止まらなかったそうです。
また、今回初めて法王にお会いするという別の若いチベット人は、
「本土の私の村ではだれも法王にお会いしたものはいません。私は村の代表です。」と言っては泣き、
何日も前から興奮して眠れず、前日から「夢のようだ」と言っては涙を流し、法話会当日法王がステージに現われたとたん通路で何度も何度も五体投地を繰り返しました。
「初めて法王に会えた時に涙を流さないチベット人はいません」とお坊さまたちもおっしゃいます。
その時の感情は言葉にはできない、ただただ胸が熱くなって涙が止まらないのだそうです。
法王に対する特別な想いはチベット人にしかわからないのかもしれませんが、法王と対面の場に遭遇したり、法王についての話をする時の表情を見るだけでも熱い気持ちは伝わってきます。
今日もまだチベット本土では、満天の星の下で月を見上げている子どもたちがいるのかと思うと微笑ましくもあり、また反面、現在のチベットの情勢では本土で法王にお会いできるチャンスは満月の夜だけと思うと、違う意味で胸が痛くもなります。