ゲンギャウ先生は、ただ今故郷のザンスカールで瞑想修行に入っておられます。修行中の先生と連絡が取れないので、南インドのデプン・ゴマンにいるお弟子さんが先生の近況を教えてくれました。
「先生は元気で修行に励んでおられるようです。瞑想中は、遠くの人と話をすることはできませんから、先生の側で世話をしているイシに電話しました」
ゲンギャウ先生の故郷はインド北部の辺境に位置するザンスカール。電話の電波も悪く、何回か電話をかけてやっと繋がるような辺鄙な場所。そんな人里はなれた場所で瞑想に入っておられるゲンギャウ先生が、誇らしくもあり、またうらやましくもある。
ゲンのお弟子さんは、ゲンの近況と一緒に、南インドの様子も教えてくれました。
「最近は雨がよく降ります。涼しくて勉強しやすいですよ」
夏の南インドはモンスーンの季節。乾期に比べると雨のおかげで気温が涼しく、比較的すごしやすい。乾期の南インドは本当に暑くて、昼間はとても勉強などできないため、みんなお昼寝休憩をとると聞いた。
「それと、一ヶ月ほど前にミクシーが死にました」
ミクシー。ミクシーはゲンギャウさんの僧坊で飼っていた白いちっちゃな犬。彼の部屋は、ゲンギャウ先生のお部屋の正面、階段の下の小さなスペース。いつ行っても、藁がひきつめてある寝床から走り出てきて、甲高い鳴声で出迎えてくれた。
「彼のためにささやかな祈りをしました。私たちもみな、いつかは通らなければならない道ですね」
ゲンギャウ先生の僧坊で、いつもみんながお経を読経するのを聞いていたミクシー。来世で善趣に生まれることができますように。