「私の心を一緒に持って行って」
福島にボランティアに出かける前、チベット人の女の子から彼女の心を託された。
ゲンギャウさんにも、福島に行ってきます、と伝えると、
「私たちもずっと想っていると伝えてください」
と言われた。
人の心。それはとてもかけがえのないものだと思う。
原発の被害で、避難してこられた人々であふれ返った福島のある避難所。将来への不安。毎日続く余震。プライバシーのない生活。ストレスがたまる環境。ぴりぴりした雰囲気が漂う。
だけど、そんな環境だからこそ、人と人とのつながり、他人に対する思いやりが必要だと強く感じた。
初めて会ったとき、ぷんぷん怒っていたお父ちゃん。何度も何度も話かけて、何度も何度も質問を繰り返したら、ぽつりぽつりと話てくれるようになって、はにかんだような笑顔を見せてくれるようになった。
いじわるなお母ちゃん。こっちが何を言っても意地悪ばっかり言われたが、めげずに話かけていたら、帰るときに、
「これ持ってけえれ」
って、花をくれた。でも、「私はなにも渡すものがないです」って言ったら、「なんにもねえのか!?」ってまた一言返してくれた。
外からやってくる苦しみは、こちら側からはどうしようもできない。だが、内側の心でその苦しみを和らげることはきっとできる。
苦しい状態だからこそ、人の温かさが心にしみる。
人からもらった温かさ。
私もまた人に渡すことが出来ればいいのにと、強く思った福島での数日だった。
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