涙は大きく分けると、二種類あるんじゃないかと、最近になって考えた。一つは自分自身のために流す涙。そしてもう一つは誰か他人のために流す涙。
悲しいことがあると、涙が頬をつたう。
上司にいびられた。
友達と喧嘩した。
恋人と別れた。
嫌なことは日々の生活で数限りなく起こる。そんなネガティブがことが起こると心が苦しくなって涙がでる。自分が味わっている苦しみに対して流す涙。だけど、最近になって涙を流すというのはそれだけではないのではないんじゃないかと感じた。
ある日チベットの先生と話をしていると、何かのきっかけで恋愛の話になって、
「チベットでは失恋したくらいで、人前で泣いたりしないですよ。そのことで頭がおかしくなったり、自殺するとかはないですね。特に男は恋愛に限らず、人前で絶対泣かないですよ」
と言われた。じゃあ、先生は泣かれたことはないんですか?と聞いてみると、
「ははは、全然泣かないですよ。でもそうですね、一度だけ、泣きました。昨年、寺院でたくさんの僧侶が公安につかまり、行方がわからなくなったとき、私は一人部屋の中で泣きましたよ」
との答えが返ってきた。
その言葉を聞いたとき、私は、はっとした。ああ、他人のために流す涙があったんだなと。
そう言えば、ゲンチャンパも、
「甥っ子が私が東京に行くといったら、『地震で危ないからお願い、行かないで』と大泣きしてたよ」
と笑っておられた。遠い日本にいる伯父さんを気遣って流す涙。
なんてあたたかい涙だろうと思う。
誰かのために流す涙。
その涙を蓄えておくために、自分のための涙はちょっと節約。