2025.03.28

本年度の神変祈願大祭が無事に成満いたしました

チベット暦正月7日-15日(2025年3月6日-16日)、本年度の神変祈願大祭(チョトゥル・モンラムチェンモ)の特別法要が、南インドのカルナタカ州モンドゴッドにあるパルデン・デプン大僧院にて開催され、デプン大僧院ならびにガンデン大僧院や多くの僧侶たちが結集し、すべての日程、すべての行事が成満いたしましたのでご報告申し上げます。

神変祈願大祭は1409年、宗祖ジェ・ツォンカパ大師は、ラサのトゥルナン寺(ジョカン)に安置されている、文成公主が招来した釈迦牟尼像に宝冠などの荘厳を施し、応身仏の姿に変えました。その成就を記念し、関係者を結集させて大法要を行ったことが、現在の神変祈願大祭の始まりです。この法要は約620年間継続し、現在ではチベット仏教最大規模の大法要となっています。

今年の神変大祭では、デプン大集会殿にて法要が行われ、正月七日に結集した僧侶たちが、八日から十五日までの一週間、毎日四会の法要を行い、十五日(3月14日)には宗祖ジェ・ツォンカパ大師の名代としてガンデン座主猊下による『本生譚蔓』に続き、教主釈迦牟尼仏を全員で供養したことによって顕密の教法が十方三世に興隆し、未来永劫に渡り興隆してゆくこと、この世間のすべての衆生たちが吉祥で、善なる兆候のみを享受してゆけること、このような法要を実行するために財物などを奉献した施主たちが今後も神々や人間のすべてに供養される一切相智の境位、つまり仏位を成就すること、そしてそれまでは仏法を護持するために支援する仏教王として権勢を発揮し、衆生たちを導くよき導き手として活躍できることを祈願しました。法要の最後には、再度十方三世の仏菩薩・本尊・護法尊・師資相承の比丘衆を礼讃し、西方極楽浄土への往生祈願も行い、如来の教法が恒久に継続できるように『月燈三昧王経』所収の『教法燦然偈』などを唱和しました。

十五日法要の翌日には、十五日供養までに加持した供物などを文殊菩薩の忿怒形である夜麻法王を通じて施餓鬼を行う「トルギャク」と呼ばれる巨大なトルマを餓鬼たちに施す儀式が行われました。これは一年間で最大の善志を悪魔や餓鬼たちに施すことで、これから一年間は人々が善業を積んでいくのを決して邪魔しないように、という厄除祈願のご利益もあります。この大施餓鬼の儀式は、祈願大祭に出仕した僧侶のなかでも位の高い各学堂の管長たち、ラマたちや護法尊などの供養を専門的に行っている僧侶たちでデプン・ゴマン学堂集会殿横の空き地にて行い、近隣のチベット難民村からは多くの方々が参拝されました。

翌十七日には、釈尊の次にこの地上に現れる予定である、弥勒菩薩の御輿がデプン大集会殿より出発し、巡回する行事がありました。弥勒菩薩は現在兜率天におられ釈尊の代理人として説法をされていますが、未来においてこの地上に現れ、釈尊の教えに触れるという機会に恵まれたのにも関わらず、さまざまな業の力によってその教えを実践し完成していくことの出来なかった不詳の衆生たちを必ず最初に救済されると言われています。このため、未来において弥勒菩薩の偉大なる慈しみの心とご縁を結んでおく、という意味で、毎年神変大祭の最後には弥勒菩薩とご縁を結んでいただくという機会が設けられています。これから先の幸福と平和、学業の発展、事業の発展など様々な明るい未来への祈りをこめて多くの人々が参拝されることとなり、無事に今年の神変祈願大祭は散会となりました。来年はガンデン大僧院にて開催される予定です。

神変祭は教主釈迦牟尼如来のご縁日に因んだチベット仏教圏最大の大祭です。この大祭は特に宗派や僧俗といったものを問わず、すべての仏教徒が、一年間でもっとも集中的に祈願を捧げることとなっています。1959年のチベットでのこの大祭の終了後、すぐにダライ・ラマ法王猊下はインドへと亡命なさり、これに伴い多くの僧侶たちがインドに亡命しましたが、現在も世界最大規模の大法要といっても過言ではありません。神変祭は現在インド各地に散在するチベット難民キャンプではもちろんのこと、北米やヨーロッパなどの様々なチベットの人々が住んでいる場所でも開催されております。

弊会でも2004年より2019年までは日本別院で毎年開催することが出来ていましたが、これについては未だ再開できる機縁がないため、日本のみなさまからはインドで行われているデプン・ガンデンの合同開催の神変祈願大祭の供物の海の一部へと供養させて頂いております。今年の神変祭では、供養をお申し込み頂いた施主のみなさま、本年一年分の厄除祈願をお申し込み頂きました施主の代表者のみなさま、そして日頃から様々な形で日本でのデプン・ゴマン学堂の活動をご支援して下さる関係各位、そしてそれ以外のみなさますべての方々のためにゴペル・リンポチェを通じて、祈願と供養をさせて頂きました。これらの皆様にも深く感謝申し上げます。

昨年久しぶりに来日されたゲンギャウ師も重要な日以外にも、何会かは法要に参列されたとのことです。またゲンギャウ師の最年長のお弟子さんであられ日本にもお越し頂いたことあった、ケンスル・リンポチェの執事であられたゲシェー・ペマ・ワンゲル師も、十五日法要の満願と共に御自坊でご逝去される悲しいニュースもありましたが、幸いにもこうした素晴らしい釈尊の神変を記念する日に亡くなられたのは、大変善いことでもあった、とゲンギャウ師は語っておられました。

このような大祭へ少なからず日本のみなさまもご縁を頂きましたこと、事務局一同、改めて深く御礼申し上げます。神変祭は既に620年以上も継続しており、日本のみなさまとのご縁もそのうち二十年以上のご縁となります。チベットの問題はいまだ解決してはおりませんが、国を失っても幸いインドの人々をはじめ、日本を含めさまざまな善意の人々のおかげでこうして最も重要な大祭の開催を継続することが出来ております。釈尊が神変を示現されたことに因んだこの大祭にご縁のあったみなさま、すこしでもこの大祭に興味があったみなさまが、釈尊の不可思議功徳の力によって今年も一年みなさまにとって素晴らしい年になるよう祈念申し上げます。

正月十五日 神変祈願大祭十五日供養の様子

正月十六日 夜麻法王大施餓鬼

弥勒菩薩の御輿の巡業

デプン大集会殿の弥勒菩薩の御輿の車が出発してデプン周辺を巡回して戻ってきました


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