このようなものが樹の論書の
法の道を示したサルガである
さて世間の法規をすこし説明したい
どうか耳を傾けて聞いてみてほしい
本偈の内容は特段説明を要さないが、詩篇の章「サルガ」の区切りを示したものである。
グンタン・リンポチェの代表的な著作であるこの『樹の教え』はここまでの三十六偈が仏教の教義とその実践に関するものを説いたものであり、ここで一区切りがなされている。ここからは、世間の法規、すなわち特に仏教や宗教の実践者でなくても知っておきたい箴言が比較的自由に七十偈ほど綴られていく。本偈までが丁度三十五偈であり、ここからの世間一般の話題についてはその倍の七十偈で全体が構成されていく。
本詩篇の『樹の教え』より後に同じような構想で書かれた『水の教え』の方は、最初に世間での処世法や教訓が述べられて、善知識に師事して仏法を学び、顕密の道を修習して如来の境地に辿り着くまでの修習の順序によって全体が構成されているが、『水の教え』は『樹の教え』の注釈として新たに内容などの再考しながら綴られたものであり、本詩編『樹の教え』は比較的自由にグンタンリンポチェの思いのままに綴られたものである。この事情については、『水の教え』の跋文部分から伺えるので既に本サイトでも全訳を公開し、会員限定で以前の記事をアーカイブスとして公開してあるので、そちらを参照されたい。
ここから続く詩篇は仏道の基本に立ち返り、良き人であるためにどのようにあれば良いのか、ということを説いている。まずは如来への道のりを確認した上で、私たち自身の私的なあり方へと思いを巡らせていくのである。