2022年9月19日・20日・21日の三日間、パルデン・デプン大僧院タシー・ゴマン学堂では、年次の暗記大試験が開催されました。
デプン・ゴマン学堂では、カラム上級・カラム初級・倶舎論・中観上級・中観初級・波羅蜜第四章・色無色・波羅蜜第一章・聖典上級・聖典初級・七十義・意類学・証類学・梗概上級・梗概中級・梗概初級・顕色赤白の合計17学級がありますが、これらのすべての学級での1年間で課題となっている仏典を毎日朝晩暗誦するための時間が合計2時間程度日課となっています。
学堂では、僧侶たちの日頃の暗誦の成果をチェックするために、口頭での暗誦・筆記試験との両方で実力実施しています。また学級を順次進級できていない者や、飛び級をした者たち、学堂の各種業務にあたる寺務官にも必要となる聖典の暗記の成果を検証するための試験を開催いたしました。
暗誦試験
筆記試験
暗誦試験の目的と意義
仏教を実践するということは「十種の法行」を実践することであると、伝統的に言われています。「十種の法行」とは、『中辺分別論』に「大乗の実践法」として説かれるものであるが、それは①仏典を文字で書写する、②供養を行う、③他者に対して施しをする、④如来のことばが他者によって読誦されるのを聴聞する、⑤如来のことばを自ら口に出して唱える、⑥如来の言葉を暗唱する、⑦ブッダの言葉を他人に解説する、⑧如来の言葉を日常的に誦詠する、⑨如来の言葉の意味を思索する、⑩その意味を修習する、という以上の十種類です。
この「⑥如来の言葉を暗唱する」(受持)の部分が、暗誦試験で試されており、如来の言葉を忘れないように正しく記憶していることは、如来の言葉についてその意味を問答することができるようになり、将来的には後輩に聖典を教授することができるようになり、最終的には仏となった時には、説法を行うことで衆生済度ができるようになります。
暗誦試験で如来の言葉を自分で覚えているのかどうかに正しく答えるようになることは、将来解脱と一切智を実現して無量の衆生を済度する菩薩として活躍するための、僧侶としてなすべきことの第一歩となります。このような多くの仏典を聴聞して、暗誦し、問答をして学習する伝統的な学問のスタイルは、ナーランダー僧院からの伝統を模範としたものであり、デプン大僧院では、1416年にジェ・ツォンカパが開創していらい、求法の徒たちがこれまで600年以上にもわたり伝灯を守り、次世代に受け継いで行っています。
暗記した内容を筆記試験でもチェックするということは、20世紀になってはじまったテストですが、口頭での暗誦試験についてはデプン大僧院で学んだ歴代のダライ・ラマ法王、ハルハ・ジェツンダンパやチャンキャ・フトクトをはじめとするモンゴルの大ラマの化身たちも、すべてどんな僧侶たちとも同じように仏典を暗誦し、その試験を受けてきましたし、現在ガンデン、デプン、セラで学んでいるすべての若い僧侶たちが同じような試験を行ってゲルク派のよき伝統を継承していっています。