「ア・マ・マ・マ・マ。こんなに人!日本って人の多さ、ダライ・ラマ法王の説法会があるわけでもないのに、半端ないね。」
日本には外国の方から見ると驚愕的な風景がある。品川駅のラッシュの光景がひとつである。品川駅で広島行きの新幹線を待つリンポチェは、朝の品川駅のラッシュをみてこんな風に驚いておっしゃった。
リンポチェは今風の人なのでiPhoneでさっそく動画をとり、リンポチェ仲間(チベットやインドにいる化身ラマのお友だち)に動画を送信。果たしてリンポチェ仲間の反応はどんなものやら。
「東京は人が多くてやだね。広島はのんびりでいいよ。広島城なんてとってもいいところだ。散歩していてとっても楽しい。東京の人はきっと金儲けに忙しいんだろうね。」
日本語が達者なアボと違って、リンポチェは日本に住んで2年になるが、あまり日本のことを分かってはいないので「そんなことないですよ。広島の人だって金儲けしたいけど、田舎なんでそんなに金儲けの話がなくて困ってる人もたくさんいますよ」というと、リンポチェは、
「いやいやいや。日本はどこもちゃっと電車でいったり、荷物を送ってもすぐ着くじゃないか。すごく貧乏な地域と金持ちの地域と大きな格差がないのは日本のいいところだよ。だから金儲けしたい人は都会にやってくるに間違いないよ。」
「ほら歩いている人たちをみたら、まっしぐらじゃないか。誰も途中で友達と話してるわけじゃないし、挨拶を交わしているわけでもない。この人たちはとにかくまっすぐ仕事に向かっているわけだよ。俺たちみたいにのんびり、ぼけっとこんなところでお茶してるわけじゃないよ。」
そんなことをおっしゃりながら、リンポチェはスターバックスがお好きなので、すこし糖尿には問題があるが、二種類の味を味わいたいので頼めとおっしゃるので、私も一緒に糖質の多いドリンクを頼むことになる。
インスタグラマーではないが、またまたリンポチェはお友達に写メを送っている。。。お友達たちはどんな反応をしているのかは謎である。
「しかし、日本の通勤ラッシュは世界的にも有名だけど、この品川駅は世界で一番人が多いのかな。何番目くらいちょい調べてみろ。」
そこでJRの公開している2018年度の乗車人数を調べて紹介することとなる。JR東日本の発表している1日の平均の乗員人数のランキングではこんな感じのようである。
品川駅は5位とそれほどでもないことにリンポチェも驚いておられる。東京駅や横浜駅はリンポチェもいらしたことがあるので、何でその二つよりこの品川駅の方が少ないのか、実際の見え方とか駅の大きさも含めてちゃんと論理的に解説しなくては納得してくれない。そもそもJRのことについて普段は分からないので、なかなかこれは大変だが、新らたな発見もある。
「いったところがないところはよく分からんが、品川駅は相当な人数ってことがわかった。とりあえず友達には一位というのはやめておこう。ところで広島駅は何人くらいだ?ウェブで調べてみろ。」
そうおっしゃるので、こんどはJR西日本のサイトにいって広島駅の人数を調べてみる。JR西日本のデータによると、大阪・京都・天王寺・京橋・三宮・鶴橋・広島・神戸・岡山・新今宮というのが上位10位に入り広島駅は西日本で7位であり、大体1日平均では「77,169人」であり、品川駅の5分の1くらいであるようである。
とりあえず広島はいいところだな。人が多すぎて金儲けばっかり考えている人がたくさんいるところでは、なかなか仏教の話は聞いてもらえないもんだからちょうどいいよ。インド料理屋もあるし、広島城や平和公園も散歩すると実に楽しいもんだ。
最近リンポチェはアボが教えてくれたインド料理屋を結構お気に入りである。最初のころは、インド料理なのになんでそんなに高くて少ないんだ、とお叱りを受けたが最近は気にいってくださったようで一安心だ。
「しかし、日本は気楽でいいな。ロシアやチベットにいくとそりゃ大変なんだ。とにかくリンポチェだからみんなすごく有難がって、列になって加持して欲しいとか、占いをして欲しいとか、とっても大変なんだ。」
「チベットに戻ったらそりゃ毎日のように、いろんなところに行ってご馳走を食べなきゃいけない。そしていろんあ人の加持をしなきゃいけない。亡くなった人の家にいってポワとかしなきゃいけないんだよ。そりゃ気持ちを込めてやるのはやるけどね、本当に善趣に転生してくれればいいけど、とっても危険なんだ。お前にはこんなことはちっとも分からないかもしれないが、実に大変なんだ。」
「ゴマン学堂で一生懸命勉強してゲシェー・ラランパになったからといって誰もそんなことは考慮してくれない。ダライ・ラマ法王に認定していただいたので、ちゃんと教理を勉強するためにゲシェー・ラランパにはなったけど、チベット仏教の信者の人たちはそんなことはちっとも気にしないわけだよ。どんなに勉強ができようが通用しない社会なんだよ。」
「彼らの信仰は素晴らしいことではあるが、それは所詮盲信ってやつだからな。まあ最近は法王の教えのおかげで仏教を学ぼうって人が増えているのは実にいいことではあるな。」
リンポチェとアボはチベットのリタンからインドを経由して、日本にやってこられている。日本で私たちは普通に接していると、そのことがいったいどんなことなのか、実はよく分からないし、そのことを忘れがちになる。しかしリタンはラサよりも標高の高いところにあり、ダライ・ラマ三世の建てたゲルク派のカムの最大の僧院であり、リンポチェはその僧院長の化身ラマであるので、リンポチェも様々な責任と背景を担っておられることは確かである。
日本の人は電車に乗っても、町を歩いていても楽しそうな顔をしてないよね。
この品川駅だってみんな同じ方向にいっているけど、これはダライ・ラマ法王の説法を受けるためにチベット人が行列しているのとは全然違うよ。みんな仕事にいってるわけだよ。
そしてね、みんなしかめっ面で幸せそうな表情をしてないんだ。これは問題だよ。インドだったらみんなお気楽に鼻歌を歌ったり、楽しくやってるもんだよ。日本人はもっと気楽にのんびり生きた方がいいと思うよ。ネガティブなことを考えるのをやめて楽しくあれるように考えるといいんだよ。
もちろんね、お釈迦さまがおっしゃるように生きているってことは大変なことだし、そりゃ世間というのは「壊れていく場所」(ジクペー・テン)っていうようにチベット語でもそんなにいいところではないけどね。だけどだからといって毎日思い悩んで生きるより、気楽に楽しくのんびり生きた方がいいよ。
仏教ってのは心の平安を意識的に作り出して、のんびりやることを教えてる宗教なんだ。何かのために無理してやるもんじゃあない。まずは楽観的に生きれるようにすることから、仏教の実践というのはあるんだよ。
私たち日本人にとってリタンからやってきてくれたリンポチェとアボはまさに「ア・マ・マ・マ・マ!」としか言いようがない。お二人が日本に住んでいることはいったいどのようなことなのか。この問いには答えがないが、リンポチェから日本人に向けてお知らせしておきたいことは
「まずはもっとのんびり、楽観的に楽しくやりましょう」
ということのようである。
リタンの旅行ガイド@TravelGretel
リンポチェたちの故郷リタンを訪れた観光客によるビデオブログです。最初は雨ばかりで楽しくなさそうですが、長閑な風景にリタンのことが好きになっていく様子がわかります。
Shangri-La: A Wonderful Journey Along the Tea Road to Lahsa. MICHAEL YAMASHITA
ナショナルジオグラフィックの写真家マイケル・ヤマシタ氏による一連のシャングリラの写真コレクションにはリタンの風景のとても美しい風景が含まれています。
https://www.amazon.co.jp/dp/885441560X/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_Ak4TDbWBP31NP