ゲルク派の宗祖ジェ・ツォンカパ・ロサンタクパ(ジェ・リンポチェ)は1419年のチベット暦10月25日に涅槃に入られました。本年は宗祖の600回忌にあたり、本山や本山のあるインドでは12月にダライ・ラマ法王を迎え、様々な行事があり、今年のリンポチェとアボの活動は残すところ、今月と来月の二ヶ月となりました。
デプン大僧院はジェ・リンポチェが在世中に高弟であったジャムヤンチュージェに命じて1416年に創立されましたが、ジェ・リンポチェは在世中にも何度もデプンを訪れて、僧侶たちに説法を行っておられます。「母より子は大きくなる」とジェ・リンポチェはガンデンよりもデプンが大きな僧院となるだろうと予言された通り、ジェ・リンポチェが最後に滞在されていた時には既に2,000名の僧侶が在籍していたとされています。
ジェ・リンポチェがデプンで『道次第論』(ラムリム)の説法を行った時に、問答法苑の中心に五色の虹が柱のように立ったとわれており、現在でもゴマン学堂の問答法苑の途中に管長が『道次第論』(ラムリム)の口伝を少しずつ授けるという伝統がそれ以来、いまに至るまで続いています。
ジェ・リンポチェが『菩提道次第広論』を完成させたのは、1402年(45歳)頃とされていますが、ジェ・リンポチェが涅槃なさる歳の1419年に至るまで、この『道次第広論』は一般の人々に対してはジェ・リンポチェご自身が禁止していたと言われていますが、1419年にはじめてデプンで一般の人に対しても説法することを解禁され、その後は『菩提道次第論』や『入中論』などの説法には一般の人も参加していいことになったと言われています。
今日ではダライ・ラマ法王が『菩提道次第広論』を何度も伝授されており、そこには出家した僧侶ではない誰でも参加していいものですが、『菩提道次第広論』は元々はこのように17年近くも一般非公開の教えであったことは、あまり知られておりません。
今日では、密教であろうとも一般に公開されている形のものもありますし、非公開のものもあります。ただ菩提道次第論自体はジェ・リンポチェにとっても極めて重要な教えであったことは確かなのです。私どももこのジェ・リンポチェのテキストを2001年より毎月法話会で少しずつ翻訳を作りながら、みなさまにご紹介する機会を維持し続けております。まだ参加されたことのない方は是非ご参加くださいますようお願い申し上げます。