弊会の創始者ケンスル・リンポチェ・ゲシェー・テンパ・ゲルツェン師(「ゲシェラー」)が東洋文庫の研究員時代に東洋文庫専任研究員であった福田洋一(大谷大学教授・前弊会理事)先生によるこれまでのツォンカパの中観思想に関する研究論文をまとめた『ツォンカパ中観思想の研究』が上梓されましたので、ご案内申し上げます。
本書の構成は、
目次
序章
第1章 中観派の不共の勝法
第2章 聖文殊の教誡による中観思想の形成過程
第3章 初期中観思想における自立論証批判
第4章 二つの二諦説
第5章 『入中論』の二諦説と中観派の不共の勝法
第6章 自性と縁起
第7章 自らの特質によって成立しているもの
第8章 中期中観思想における言語論的転回
第9章 二つの自性
終章
となっており、特にツォンカパが自らの中観思想の根本と考えたものを構造的に明らかにしたものです。特に「中観派の不共の勝法」と呼ばれる、
- 縁起を論証因として無自性が論証される
- 無自性なものにおいて、輪廻から涅槃に至るまでの縁起する存在すべての設定が成り立つ。
- 縁起の意味が無自性なる空性の意味として現れる。
という三つの根本命題が、一体どのようなことなのかということを詳しく考察しています。学術的な研究書ではありますが、一般にツォンカパの中観思想というものが、どのような思想なのかを理解する上でも、出発点となる根本的な命題について議論がなされており、すべての方にとってお勧めできる良書といえます。
判型:四六版
出版社: 大東出版社
言語: 日本語
発売日: 2018/2/28
福田洋一[フクダヨウイチ]
1983年、東京大学大学院修士課程(印度哲学)修了。(財)東洋文庫チベット研究室専任研究員を経て2004年より大谷大学文学部教授
KEYWORDS: ケンスル・リンポチェ/福田洋一