弊会文殊師利大乗仏教会の設立時からのメンバーであり、東洋文庫でハルドン・ケンスル・リンポチェ・ゲシェー・テンパ・ゲルツェンに学ばれた現銀谷史明氏とチベット仏教普及協会のガワン・ウースン・ゴンタ氏の共訳によるダライ・ラマ1世ゲンドゥンドップ(1391-1474)の『解脱道解明』(ズーティク・タルラムセルチェー)の全訳が出版され、寄贈いただいた。
『阿毘達摩倶舎論』は日本でも「唯識三年、倶舎八年」と言われる仏教の古典である。本書はその『本頌』に対して、ダライ・ラマ1世ゲンドゥンドップが注釈を施したものであり、ゲルク派の僧院でも一般的に学ばれているものの全訳であり、この一冊で倶舎論の全体像がわかることになる。
現銀谷氏がこの翻訳をはじめた時から、もはや20年以上もの時が経っているが、氏が少しずつ発表されてきた学術的な成果がいま結実したものを目の当たりにするに心からの敬意表したい。
数年前からは、GOMANG ACADEMY JAPANとして、氏はロンドル・ラマの阿毘達磨用語集やクンケン・ジャムヤンシェーパの倶舎論の問答教科書の研究に取り組んでいただいるが、まずは永年とりくまれたこの『解脱道解明』が世に出たことは大変素晴らしいことである。
本書はこれから我が国で倶舎論を学ぼうとするすべての人にとって必携の一冊であることは疑いなき事実である。このような素晴らしい成果を寄贈してくださった両訳者に心からの謝意を申し上げたい。
現銀谷史明 / ガワン・ウースン・ゴンタ 訳
全訳 ダライ・ラマ1世 倶舎論註『解脱道解明』
仏教の人間観・世界観を詳細に説き、「仏教の基礎学」として北伝仏教で広く親しまれた『倶舎論』。本書は、ダライ・ラマ1 世ゲンドゥンドゥプ(1391-1474)が、インド・チベットの諸註を踏まえて、その全偈頌を明快に解説した格好の「倶舎論入門」である。序論ではチベットにおける『倶舎論』伝承史も詳説。
【訳者紹介】現銀谷史明:東洋大学東洋学研究所客員研究員 / ガワン・ウースン・ゴンタ:チベット仏教普及協会講師
A5判上製640頁 定価13, 824円(税込)ISBN978-4-907022-12-9
【目 次】
序 論
倶舎論註『解脱道解明』
第一章 界 品
第二章 根 品
第三章 世間品
第四章 業 品
第五章 随眠品
第六章 賢聖品
第七章 智 品
第八章 定 品
結 語
あとがき