チベットの僧侶の衣は何故赤いのかと申しますと、もちろんそれはチベットは気候が大変寒いということもあげられますが、お釈迦さまがお経のなかで「黄色か青か赤の衣を着るとよい」とおっしゃっているのに基づいています。
またチベットの僧侶の衣のなかで下に履くシャンタプというのがあるのですが、これは右側は後ろ向きに二つに折り、左側は前向きに二つに折って着ます。これは仏教で説かれる四諦を表現しています。後ろ向きになっているのは、苦諦と集諦、つまり苦しみとその原因である煩悩を表しており、これは断じるべきものです。前向きに折ってあるのは、道諦と滅諦、つまり苦しみの止滅とそれに至る過程を意味しています。これは守るべき二つのものです。それ以外にも真ん中に二つに折り込みます。これは智慧と方便とを意味しています。
チベットの僧侶たちの特徴として、表面的な振る舞いや行動というものは小乗仏教のやり方を採用しており、内面的な哲学的な側面として、大乗仏教の菩提心や空の思想を採用している点があげられます。そしてそれはチベット人が勝手に作り上げた伝統ではなく、インドから仏教を招聘したときに、そのようなやり方を採用したらいいとインドの学者たちが伝えたものです。
大乗仏教と小乗仏教の違いというのは、荷物が大きいのか小さいのかという意味での違いです。小乗仏教というのは、自分がこの苦しみの世界から解脱することを目指しているのですが、それに対して大乗仏教というのは、自分だけではなくすべての衆生が解脱することを目指している、という意味で大きな荷物を背負っているのだと言われています。